燕尾服とタキシード、モーニングの違いとは?礼装の着分けルールを解説

  • 燕尾服とタキシードってどう違うの?
  • 燕尾服やモーニングはいつ着るのが正解?
  • 礼服はルールが難しいけど、ルールはどうやって知るべき?

燕尾服・タキシード・モーニングの違いは、着たことのある人でも間違いやすく、難しいものです。

しかし、礼装(フォーマルウェア)のルールに流行はなく何年も変わらないため、一度覚えておくといざという時に役立ちます。

これは体験談ですが、結婚式の主賓スピーチを頼んだ上司が、当日にヨレヨレの紫色のビジネススーツと柄ネクタイで出席し、恥ずかしい思いをしたことがあります。(同じテーブルの部下のほうがきちんとした服装で出席していたことに、本人がどう思ったか聞いてみたいところですが)

シーンに合わせて服装を着分けるということは、本人の問題だけではなく、相手(主催者)や出会う人すべてに対して敬意やおもてなしの心を伝える大切な手段でもあるのです。

この記事では、燕尾服を中心とした礼装の違いや着分けるためのルールを解説します。大切なシーンで失敗することがないよう、ぜひ参考にしてください。

燕尾服についてのマナーはこちら≫燕尾服とは?いつ着るのが正解?で解説しています。

目次

【燕尾服とタキシードの違い】モーニングとは時間帯で分ける

燕尾服とタキシードは夜の正礼装
燕尾服とタキシードは夜の正礼装

燕尾服とタキシードの違いとは

  • どちらも基本的に夜の正礼装(夕方5時~6時以降)
  • 燕尾服とタキシードは「格が違う」ので着るべきシーンが違う
  • 燕尾服は第一礼装でもっとも格が高い

燕尾服とタキシードはどちらも夜の礼装で、燕尾服のほうが格が高い「ホワイトタイ」、タキシードは「ブラックタイ」として分けられています。

燕尾服は格式の高さから、着るべきシーンが決められていますが、タキシードはどうなのでしょうか。

タキシード(ディナースーツ)とは

タキシード
タキシード

タキシードは、燕尾服のデザインを簡略化して作られたスーツであり、国際プロトコール(国際儀礼に着られる衣類)に定められた「正礼装」です。

燕尾服の後発品として作られた歴史や格の違いからタキシードを「準礼装」としているマナーBOOKもあり、どちらにもとらえられるフォーマルウェアとして広く着られています。

燕尾服と同じようにジャケットの襟元には拝絹(ハイケン)地がつき、白黒でコーディネートしますが、異なっている点も多く注意が必要です。

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燕尾服(テールコート)タキシード(ディナースーツ)
ジャケット燕の尾のように後ろが長い
襟元に拝絹地(ハイケン地)がつく
長さはなく裾は水平
襟元に拝絹地(ハイケン地)がつく
スラックス側章:2本(国際マナーでは1本も可)側章:1本
ウエストコート白いピケ生地の襟付きベスト上着と同生地の襟付きベスト
(カマーバンドでも可)
ネクタイ白い蝶ネクタイ黒い蝶ネクタイ
装飾品白を基調としたもの(パールなど)黒を基調としたもの(黒真珠など)
燕尾服とタキシード、主な特徴

とくにネクタイの色は、「燕尾服=ホワイトタイ」「タキシード=ブラックタイ」と分けられる、代名詞ともいえる違いなので間違えないよう覚えておきましょう。

何年も前の話ですが、アメリカ大統領がタキシードに白い蝶ネクタイをして公式行事に出席し、世界で議論になったことがありました。意図的だったのか間違いだったのかは分かりませんが、どちらにしても正しい知識をもつことは重要です。

タキシードには、フォーマルウェアとしての正式なタキシード以外にも、赤や緑などの生地を使ったいわゆる「ファンシータキシード」、近年ニーズの高まっているデニムやチェックの柄生地を使った「カジュアルなタキシード」などがあります。この記事での「タキシード」は、すべてフォーマルウェアとしてのタキシードになるので、間違えないように注意してください。

タキシードと燕尾服、着るべきシーンの違いとは

ホワイトタイとブラックタイ
ホワイトタイとブラックタイ

タキシードと燕尾服の格の違いといっても、どのように着分けるべきなのでしょうか。

燕尾服は宮中晩餐会などの国際行事で着用されることが一般的で、私たち庶民が着る機会は結婚式・披露宴以外にありませんが、タキシードは一般的なフォーマルウェアとして多くのシーンで着られています。

いくつかシーン例をあげますが、正確には「主催者」「参列者(ゲスト)」でも異なるので、ドレスコードの記載がないパーティーなどではシーン別の着分けを確認してから服装を決めます。

タキシード・燕尾服はどちらも慶事(祝儀)用で、弔事には着用できません

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燕尾服(テールコート)タキシード(ディナースーツ)
ドレスコードWhite tie(ホワイトタイ)
Most Formal(モストフォーマル)
Black tie(ブラックタイ)
着用シーン大綬章親授式・宮中晩餐会・ノーベル賞授賞式・記念式典・舞踏会・音楽会・結婚式・披露宴など記念式典・レセプション・祝賀会・結婚式・披露宴・パーティー・晩餐会・音楽会・ディナーショーなど
燕尾服とタキシードの着用シーン

【燕尾服とモーニングの違い】タキシードとは格が違う

モーニングは昼の正礼装
モーニングは昼の正礼装

燕尾服とモーニングの違いとは

  • 燕尾服は夜の正礼装モーニングは昼の正礼装(~夕方5時・6時まで)
  • 燕尾服とモーニングは本来「格が違う」ものだが、日本では第一礼装のように着られることもある
  • モーニングは弔事でも着用できる唯一のフォーマルウェア

燕尾服とモーニングの大きな違いは、着用する時間帯です。

モーニングはモーニングコートのことで、名前の通り、もともとは午前中に着るものでした。
現在では、結婚式などで昼夜を問わず着られることもありますが、基本的には明るい時間帯に着用するものであることを知っておきましょう。

また、もともと和服には時間帯で衣類を分けるという習慣が無く、西洋式の礼装が広まった時に誤って認識された経緯があるようで、日本国内では、重要な公式行事や夜間であってもモーニングを着ることがあります。

モーニングとは

モーニングコート
モーニングコート

モーニングも燕尾服のデザインを簡略化して作られたスーツで、国際プロトコール(国際儀礼に着られる衣類)に定められた「正礼装」です。

着る時間帯や格の違いから、マナーBOOKによってはタキシードと同じくモーニングも「準礼装」としているケースがありますが、どちらも誤りではありません。
タキシードもモーニングも、もともとは準礼装として作られたものですが、年月を経て日本では正礼装のような位置づけになりました。
ただし同じ”正礼装”であっても燕尾服だけは別格の第一礼装であることは覚えておきましょう。

燕尾服と同じようにジャケットの裾が長くなっていることが一番の特徴ですが、襟元に拝絹(ハイケン)地はつきません。

慶事・弔事の両方に使え、ベストやネクタイを変える必要がありますが、この記事では慶事の装い方で解説しています。

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燕尾服(テールコート)モーニング(カット・アウェイ・フロックコート)
ジャケット燕の尾のように後ろが長い
襟元に拝絹地(ハイケン地)がつく
燕の尾のように後ろが長い
襟元に拝絹地(ハイケン地)は無い
スラックス側章付きグレーベースの縞(しま)模様
裾は後ろが長めのモーニングカット
ウエストコート白いピケ生地の襟付きベスト上着と同生地かライトグレーのベスト
ネクタイ白い蝶ネクタイ白黒の斜め縞(しま)かシルバーグレー

結び下げかアイコットタイ
装飾品白を基調としたもの(パールなど)色があっても良いが、パールなどが無難
燕尾服とモーニング、主な特徴

ジャケットの後ろが長いという点から、燕尾服と間違って認識されることもありますが、しっかり見ると違いが分かります。

他のフォーマルウェアと違い、縞(しま)模様のスラックスやネクタイを装い、ジャケットのフロント部分が流れるような形状になっています。昼の服装にはツヤのある生地(拝絹地)を使わないため、昼・夜の礼装が分からなくなった時に見分けるポイントになります。

モーニングと燕尾服、着るべきシーンの違いとは

モーニングと燕尾服は、昼だからモーニング、夜だから燕尾服というほど簡単に着分けることができません。

モーニングは弔事に使用できる唯一の正礼装なので、慶事か弔事かという点でも着分ける必要があります。

慶事であっても燕尾服のほうが格が上になるので、昼夜を問わずモーニングを着るべきシーンもあるので、行事・シーンによって考えましょう。

モーニングは卒業式や地鎮祭などの身近な行事に着られることも多く、「主催者」「参列者(ゲスト)」でドレスコードが変わるので注意が必要です。

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燕尾服(テールコート)モーニング(カット・アウェイ・フロックコート)
慶事大綬章親授式・宮中晩餐会・ノーベル賞授賞式・記念式典・舞踏会・音楽会・結婚式・披露宴など叙勲・園遊会・記念式典(地鎮祭・竣工式)・祝賀会・入学式・卒業式・結婚式・披露宴など
弔事正式葬儀・告別式・お別れの会・偲ぶ会
燕尾服とモーニングの着用シーン

燕尾服・タキシード・モーニングの違いをイラストで比較

燕尾服・タキシード・モーニングの違いをイラストで解説します。

イラストはコーディネートの一例ですが、比較するとジャケットの形状・ネクタイなど、パーツのすべてが違っていることが分かると思います。

シャツやポケットチーフにも礼装によって変わるので、正礼装を着る場合はしっかり確認しましょう。

燕尾服の装い
燕尾服の装い
タキシードの装い
タキシードの装い
モーニングの装い
モーニングの装い

それぞれの礼装に「格の違い」はありますが、状況(シーン)によってモーニングが第一礼装のように着られたり、タキシードを昼間に着たりということもあり、実際は下図のようにきっちり分けられない曖昧さがあることを知っておきましょう。

正礼装の分類
正礼装の分類

礼装は、格が低いものを着るのはもちろんNGですが、格が高すぎるものを着るのもNGです。

難しく感じるかもしれませんが、シーンに合わせて何を着るべきかは少し調べたら分かるので、フォーマルウェアを着る機会の多い方は信頼できるマナーBOOKを持っておかれることをオススメします。

燕尾服・タキシード・モーニングの結婚式での着分け例

モーニングを着た新郎
モーニングを着た新郎

燕尾服・タキシード・モーニングは結婚式でとてもよく着用されています。

多くがレンタルで、新婦のドレス・式の規模・時間帯などで、コーディネーター(プランナー)さんがすすめてくれるものを着る人が多いのですが、本来どのような意味のあるフォーマルウェアかを知っておきましょう。

会場の規模・雰囲気
結婚式では新郎はモーニングかタキシードを着ることが多いのですが、身内だけのガーデンウェディングのような場でモーニングを着ると仰々しくなることもあります。
パーティーの規模や雰囲気に合わせて、セミフォーマルなタキシードやダークスーツスリーピーススーツなども取り入れましょう。

披露宴・パーティーの時間帯
時間を気にする場合、昼ならモーニングなどの光沢のない生地の衣装、夕方6時以降ならタキシードなどの光沢を取り入れた生地の衣装と分けられますが、夕方6時に披露宴が終わらないことも多々あります。
3時・4時から夜間にかけての披露宴で、お色直しがない場合は、初めから夜の装いで着用してかまいません。
本来は着替えたほうがいいのしょうが、親族や友人など面識のあるメンバーを前にする会で、そこまで厳格にする必要はないとされています。

親族(父親)の服装
父親は、新郎新婦の親(主催者側)であることがわかるよう、格の高いモーニングを着ることが多いのですが、新郎がタキシードやフロックコートの場合、モーニングを着た父親の方が格が高くなることもあります。
フォーマルルールからみると、新郎と同等か、やや格を下げた衣類を選んだ方がよいと思いますが、そこまで気にしないという方も多く、個人の判断になってきます。

フォーマルウェアのルールは知っておくべき

燕尾服やモーニング、タキシードは、結婚式でしか目にしないことも多かったのですが、近年のクラシック回帰の影響(映え文化の影響もあるかもしれませんが)で、ややカジュアルにタキシードを楽しむ人が増えた印象があります。

礼服が身近になり、とてもいい傾向ではありますが、気崩しやアレンジが許されないシーンもあることを知っておきましょう。

おさらい
  • 燕尾服・モーニング・タキシードは国際プロトコールに定められた正礼装
  • 燕尾服はもっとも格式の高い”第一礼装”
  • タキシードは夜間の正礼装
  • モーニングは昼間の正礼装だが、夜間の公式行事で着られることもある
  • 結婚式では、昼夜を問わず会場の規模や雰囲気でフォーマルウェアを決めることがある

基本ルールや意味を知って、フォーマルな着こなしを楽しみましょう。

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