スーツの袖ボタンの数や位置にこだわる!好感度が上がる選び方

  • スーツの袖ボタンの穴がない!何のためについているの?
  • 袖ボタンの数や位置にマナーはある?種類が多くて迷う……
  • スーツの袖もボタンもおしゃれにしたい。どんな方法がある?

「スーツの袖にボタンがない!つけた方がいいの?」など、スーツの袖にボタンがついている意味について不思議に思った方も多いはず。
採用試験の面接や大事な商談など、特にビジネスシーンではスーツの前ボタンのマナーと同じように、失礼にあたらないかと袖のボタンマナーが気になりますよね。

今回はスーツの袖ボタンについて、それがつけられている意味や袖ボタンにはどういった種類があるのか、ボタンの個数や位置について詳しく解説いたします。

スーツのおしゃれな着こなしには袖のボタンも大きく関わっています。
カフスボタンやアームガーターなどのアクセサリーを効果的に使って、スッキリと好感度が上がるスーツの着こなしも紹介いたします。

スーツの袖ボタンはジャケットの飾りの要素が強く、自分のこだわりやおしゃれを楽しめる数少ない場所です。
普段は特にボタンマナーのような決まりはありませんが、カジュアルシーンやビジネスシーンでは定番といったボタンの個数や位置があります。

また例外として、礼服の中でも喪服のボタンは並び付けにすると決まっていますので注意が必要です。

目次

袖ボタンが付いている意味はスーツの飾りとして

スーツの袖ボタンは装飾
スーツの袖ボタンは装飾

スーツの袖ボタンとは何のためについているのでしょうか。

手袋を多用するような時代には、その着脱に便利だということで、袖ボタンにも実用的な意味をもっていたようです。
しかし現在の袖のボタンは基本的に装飾としてつけられているため実用性は特に考えられていません。

ではなぜ袖にボタンが付けられたのか、そもそもの理由にはいくつか説があるようです。
ここでは代表的な説を2つご紹介しましょう。

鼻水を拭わせないために……ナポレオンが重視した身だしなみ

まずは「ロシア遠征時にナポレオンが袖ボタンを付けさせた」という説です。
おそらく皆さんは戦争と袖のボタンになんの関係が?と不思議に思われるでしょうが、実は戦略的な意味合いがあるのです。

1812年にナポレオンがロシアへと侵攻、戦力に劣るロシア軍が遅延作戦を取ったこともあり、6月から始まった戦いは冬の季節まで長引くことになりました。

冬の装備など持ち合わせていないフランス軍の兵士たちは、ロシアの厳しい冬の気候で寒さのあまり風邪をひき、鼻水を袖で拭くようになります。

袖が鼻水でテカテカ、カピカピになっていては、ロシア軍に兵士たちの体調が悪いことがわかってしまい不利になりかねません。
兵士たちに袖で鼻水を拭くのを禁止しても守られることはありませんでした。

そこで袖に金属製のボタンを付けることにより、鼻水を拭けなくしてしまったというのがこの説の内容です。
ことの真偽はともかく、本当だったらとてもユニークな理由ですよね。

医者がスーツを脱がずに腕をめくれるようにするため

昔はスーツのジャケットを脱ぐのは失礼なことと思われていましたが、医者は治療をする際に袖が邪魔になってしまいます。
そのため治療時にジャケットの袖をまくることができるよう腕ボタンがつけられたという説があります。

これは「ドクタースタイル」と呼ばれており、日本では「本切羽」とも呼ぶ袖ボタンの仕様です。

また昔は普段から手袋を着用することも多く、スーツはオーダーメイドで仕立てるのが主流だったこともあり、袖のボタンを使えるように依頼されることが多かったのでしょう。

第二次世界大戦後、スーツが既製品として大量生産され始めると、ビジネスシーンを中心に大勢の人々が着用するようになります。
多くの人々はスーツで袖をまくるようなことは滅多にないため、徐々に袖のボタンは実用的な意味をなくし、本来の飾りへと戻っていくのでした。

それでは現代ではどのような袖ボタンの付け方が主流となっているのか、次の章から具体的に紹介いたします。

ボタンの位置はスーツの袖を開けたいかどうかで変わる

スーツの袖ボタンは「袖ボタンが開くかどうか」「ボタンの並び方」で各2種類ずつ仕様がわかれています。
この章では前者について紹介いたします。

ボタンホールは開いておらず、飾りとしてホールの刺繡とボタンが付けられているものを「開き見せ」、実際にボタンホールが開けられており、ボタンの開け閉めができるようになっているものが「本切羽」と呼ばれます。

開き見せ(あきみせ)

開き見せのイメージ
開き見せのイメージ

「開き見せ」とはスーツの袖ボタンの位置にボタンホールの刺繍とボタンが取り付けてある袖の加工方法です。
ボタンホールとはいっても実際に穴が開いているわけではなく、刺繍でそれらしく見せているだけで、実際にボタンを外すことはできません。純粋に飾りとしてつけられています。

開き見せは既製品に多く採用されています。一番の利点は袖丈の調整が袖口から簡単に行えることでしょう。
ボタンホールの刺繍を解いてしまえば、袖ボタンの位置を自由に動かすことができるのです。

本切羽(ほんせっぱ)

本切羽のイメージ
本切羽のイメージ

「本切羽」とは実際に袖ボタンを外すことができるように加工されている袖の加工方法です。

開き見せとは異なり、実際にボタンホールの穴が開けてあり、ボタンを外して袖をまくることも可能です。

また本切羽であっても将来の袖丈の調整のために、あえて一番上やその下のボタンホールは開けずにおき、刺繍だけにする場合もあります。

現代ではあまりスーツの袖をまくる機会はないかもしれませんが、袖丈の直しが必要ないオーダースーツを仕立てる際には、こだわりとして本切羽を選ぶのもいいかもしれませんね。

袖ボタンの並び方でスーツのおしゃれ感も変化

スーツの袖ボタンを開くかどうかの違いについて先程説明いたしましたが、袖ボタンのつける位置や並び方でも見た目に違いがでてきます。

「ボタンの間隔が開いている」「ボタンが接している」「ボタンが重なっている」という主に3パターンがありますが、ボタン同士の間隔が開くほどゆったりした古風な印象になり、重なっているものは装飾感が強調される傾向にあります。

現在主流となっているボタンが重なっている「重ねボタン」とボタンが接している「並び付け」について詳しく説明いたします。

袖重ねボタン

袖重ねボタン
袖重ねボタン

ボタンの一点が重なり合うように並べてつける袖ボタンの見せ方です。「キッスボタン」と呼ばれることもあります。

ボタンを重ねることで、より装飾の意味合いが強くなり、少し洒落た感じになります。

一説にはイタリアの職人が高い仕立ての技術をアピールするために生まれたと言われています。
それを裏付けるかのように、エルメネジルド・ゼニアなどのイラリアブランドには袖の重ねボタンになっているものを多く見かけることができます。

袖ボタン並び付け

並び付けのイメージ
並び付けのイメージ

スーツの袖ボタンが重ならないように並べて付ける方法です。既製品として売られているスーツの袖ボタンはこの並びになっていることが多いでしょう。

目立った特徴もないことから、並び付けの袖ボタンを選んでおけばどのようなシーンでも無難に着こなせるスーツだといえます。

通夜や葬式、告別式などの弔事では必ず並び付けのボタンのものを選びましょう。

スーツの袖丈を直す場合は開き見せがおすすめ

スーツを購入するときや、長年着用して丈が合わなくなった袖を直す場合には、開き見せの方が融通が利きます

ボタンホールの穴が開いていないため、刺繍の糸を解き、ボタンを外してしまえば袖の先から長さが調節できますし、調節後に改めてボタンホールの刺繍とボタンを付けてしまえば見栄えは全く変わりません。

本切羽の袖でも丈の直しができる場合もあるのですが、ボタンホールの位置は動かせないため袖の先からの調整はとても困難で、ボタンと袖の位置が近づきすぎてしまい見栄えが悪くなる可能性が高くなります。

肩から詰める方法もありますが、直す際に肩にシワが入ってしまう恐れがあるため難しく、直しの費用も高くなりがちです。
本切羽の袖のスーツは直しができないと考えておきましょう。

袖ボタンの数で変わるスーツの印象

袖ボタンで変わるイメージ
袖ボタンで変わるイメージ

これまではスーツの袖ボタンの位置や付け方について説明してきました。
それではボタンの数はいくつが適当なのでしょうか。

実はボタンの数に正解はなく、1つでも、3つでも、5つでも、無くても構わないのです。
ボタンの付いている数によってスーツや相手に与えるイメージが変わってきますので、自分の好みと着用するシーンによって選んでみましょう。

【袖ボタンなし】ジャケットでも腕まくりができる気軽さがポイント

袖にボタンがないジャケットはレディーススーツではよくあるタイプです。
もしくはセレクトショップなどでは購入者の好みのボタン数や位置で付けるためにわざとボタンが付いていない状態で販売されていることもあります。

袖のボタンがないため、袖を汚しそうな作業をするときや、暑くてもジャケットを脱げないときなど袖をまくりやすいなど、カジュアルに着こなすことができます。

またボタンの位置を気にする必要がないため、袖丈の直しがしやすく、後から自分でボタンを付けることもできるなど自分の好みで楽しめる一着になるかもしれません。

【袖ボタン1つ~2つ】カジュアルジャケット向き

袖のボタンが1~2つというのはカジュアルなジャケットに多く見られる数です。
一般的にボタンの数が少ないほど活動的なイメージになるため、ビジネスというよりはプライベートで着用するジャケットに向いています

またレディーススーツでは袖のボタンが1つだけついているビジネススーツが多く販売されています。

【袖ボタン3つ~4つ】ビジネスシーンでは定番の数

3つ~4つの袖ボタンはビジネススーツでは定番の数です。おそらく既製品で売られているもののほとんどがこのどちらかではないでしょうか。

もしボタンの数で悩むようならば、このどちらかのものを購入するのが無難です。
4つ以上になるとスーツに重厚な印象が加わるため、商談などでもスーツの着こなしにより安心感や信頼感といった好印象を与えることができるかもしれません。

【袖ボタン5つ以上】スーツのデザインにこだわりたい方向け

袖のボタンを5つ以上つける場合はオーダースーツを仕立てる場合がほとんどでしょう。
このような細かい点まで自由に選ぶことができるのがオーダースーツの特権です。

ボタンの数だけではなく、位置や並び、使うボタンの種類にもこだわり、自分好みのスーツを仕立てることができるので、上級者のための楽しみといったところでしょうか。

レディーススーツの袖ボタンの数はなしや1つが多数派

レディーススーツのイメージ
レディーススーツのイメージ

レディーススーツではメンズと異なり袖のボタンがない、もしくは1つといったものが主流です。

就職の面接などでボタンの数が少ない!など気にされる方も多いようですが、袖ボタンの数で採否を左右されることはほとんどありませんので心配は無用です。

ビジネスシーンで着用するスーツでは、メンズスーツと異なりデザインのバリエーションがとても多く選択肢が広いのが特徴的です。
活動的に見えるように袖丈が短いデザインになっているものなど、ボタンが付いていない方が自然なものも多くあります。

いずれにせよ袖のボタンにはマナーは特にありませんので、ご自分の好みで選んで構わないでしょう。

袖のボタンがスーツのクリーニングで割れてしまったら、まずはお店へ

スーツをクリーニングに出したらボタンが割れてしまった!という経験は割と多く発生するトラブルです。
もしそれがお気に入りのボタンだったなら、本当にガッカリしてしまいますよね。

クリーニング店では機械を使って圧力をかけたり、薬品で洗浄したりと、ボタンにとっては色落ちや変形、破損などの危険と常に隣り合わせな状態です。

もし、クリーニングによってボタンが割れてしまったなどのトラブルが起こった場合には、できるだけ早くお店に相談をしてみましょう。お店によっては何らかの補償をしていただける場合もあります。
スーツのクリーニングについては別ページで詳しく紹介していますので、ぜひあわせてお読みください。

また残念ながら補償をしていただけなかった場合は、予備のボタンや新しいボタンを自分で付けてみましょう。
スーツのボタンの付け方については後日別ページを作成する予定です。

スーツをおしゃれに見せるカフスボタン・アームガーターの活用法

礼服とカフスボタンのコーディネート例
礼服とカフスボタンのコーディネート例

いくらこだわって作ったスーツでも、袖丈が長すぎたり短すぎるとだらしなく見えてしまい、せっかくのスーツが台無しです。

スーツのジャケットの袖は腕を下した状態で、手首のでっぱった骨を隠す程度がちょうどいい長さです。
またワイシャツはそのジャケットの裾よりも1~1.5cm見える程度がベストです。

しかしワイシャツは首回りや肩幅などに合わせて選ぶと、袖が長くなってしまうことがありますよね。
そういう時に袖の長さを調節できるのが「アームガーター」または「アームベルト」です。

アームベルトのイメージ
アームベルトのイメージ

「アームガーター」や「アームベルト」はシャツの袖の長さを調節するアクセサリーです。

アームガーターの場合はクリップを挟むのに少し手間取るかもしれませんが、アームベルトは腕に通してシャツの長さを調整するだけなのでとても簡単に装着ができます。
ほんの少しの手間をかければ、袖が長いというだけの理由で気に入っているシャツを買いなおす必要がなくなるのはうれしいですよね。

さらにジャケットを脱いでもおしゃれなアクセサリーとして見せることができるのも便利な点です。

また「カフスボタン」も袖丈の調整やスーツをおしゃれに着こなすのに便利なアクセサリーのひとつです。

カフスボタンのイメージ
カフスボタンのイメージ

「カフスボタン」や「カフス」という呼び名は日本独自のもので、正確には「カフリンクス」といいます。
17世紀のフランスで袖口にもアクセントをつけたいという社交界の要望から生まれたといわれています。

カフスボタンは両袖の穴を通して留める必要があり、片側にボタンが付いていて、穴が開いていないワイシャツでは使えないため、あまり使う機会が少ないかもしれません。

しかしお祝いで礼服を着用するときには、コーディネートのひとつとしてつけるのがマナーな場合もありますので、普段から袖口のおしゃれとして楽しんでみてはいかがでしょうか。

ビジネスシーンでカフスを付ける場合にはシルバーでシンプルなものを選ぶのがベターです。
数ミリ袖の内側に留めることによってシャツの袖丈を調節することができます。

礼服に合わせるカフスボタンは、礼装の種類やシーンにより決まっている場合があります。

着用する機会の多いダークスーツを例に挙げて考えてみましょう。

昼の儀式的な意味合いが強いシーンではゴールドまたはシルバーの台座に真珠や白蝶貝などの白い石のものを合わせるのがおすすめです。
夜の宴のようなシーンでは場の雰囲気をふまえつつ、フォーマルらしいドレスアップできるようなものを選ぶのがおすすめです。

スーツの袖ボタンの数や位置に決まりはないため好みで選んでOK

今回はスーツの袖ボタンについて詳しく解説してきました。

袖のボタンが付いている意味は装飾以外にはなく、ジャケットのようなボタンマナーも特にはありません。
ボタンの数は全く付けないものから5つ以上など、スーツの用途や着用シーンによって自由に選ぶことができます。

スーツの袖ボタンについておさらい
  • スーツの袖ボタンが付けられている意味は特になく、飾りとしてつけられている
  • 袖ボタンの仕様は本切羽や開き見せ、重ね付けや並び付けなどさまざまな種類がある
  • 袖ボタンの個数はレディーススーツだと0~1つ、メンズスーツだと3~4つが一般的

スーツの袖ボタンは普段はあまり気にならない場所ですが、それだけにこだわっておしゃれをすることができる通なポイントにもなりえます。
もしスーツをオーダーするなど袖やボタンの仕様を選ぶ機会に恵まれた際には、ぜひ自分のこだわりを発揮して注文をしてみてはいかがでしょうか。


参考 日本フォーマル協会
参考 飯野高広著「紳士服を嗜む 身体と心に合う一着を選ぶ」朝日新聞出版

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