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    Ermenegildo Zegna(ゼニア) おすすめ生地レーベル「SHANG」

    一般的なゼニアの春夏生地、たとえば「トロフェオ」「トロピカル」「クールエフェクト」は、100%ウールを使用して織られています。
    しかし、「SHANG(シャン)」には、10%シルクが混紡されています。なぜ、ゼニアの「SHANG」にはシルクが混ぜられているのでしょうか。

    シルクには、触った瞬間の生地のひんやり感、吸湿性と放湿性の高さ、表面の独特の光沢などの特徴があります。
    シルクを混紡したゼニアの生地「SHANG」も当然、このような特徴を持っています。
    たとえば、「SHANG」で作ったスーツは、着た瞬間はひんやりと冷たく感じます。また、汗を吸って外に逃がしてくれるので、暑い夏でも快適に着ることができます。
    現代であれば、「クールエフェクト」のような科学技術を使えばウール素材でも涼しく着られる生地を作ることができます(詳しくは「クールエフェクト」のページで解説しています)。しかし、このような技術がなかった時代では、「SHANG」のようにシルクを混紡して、少しでも涼しく着られる生地を作る工夫が必要だったのでしょう。

    「SHANG」のひんやり感、吸湿性と放湿性の高さの秘密はシルクの繊維の細さにあります。
    絹糸の細さは「デニール」という単位で表します。シルクを生地にするにはまず、蚕が作った繭から糸を取り出します。この時点での糸の細さはわずか約2.8デニールです。
    ウールの糸の繊細さを示す基準である番手(1キログラムの原毛から何キロメートルの長さの糸を作ることができるかを元に、糸の細さを示す基準)に直すと、1デニールは9000番手。2.8デニールをおおよそ3デニールだとすると、3000番手です。ゼニアの「トロフェオ」に使われている糸が118番手であることから考えると、シルクの繊維の細さを察することができるのではないでしょうか。
    絹の特性このような細い状態では生地を織れないので、細い糸を撚り合わせてより太い糸を作るのですが、このとき、絹糸の繊維と繊維の間には、小さな空気の層がたくさんできます。空気は熱を伝えにくいため、空気をたくさん含んだシルク混の生地「SHANG」もまた、熱を伝えにくい生地となります。
    ゼニアの「SHANG」でできたスーツを着るときには、シルクの繊維の間に含まれた空気は、まだそれほど熱くなっていません。ですから、ひんやりと心地よく着られるわけです。

    また、「SHANG」には独特の光沢がありますが、これが生まれる理由もまたシルクの繊維にあります。シルクの繊維の断面は、図のように三角形に近い形をしています。この繊維に光があたると図のようにきれいに反射するので、美しい光沢が生まれるのです。
    絹の光沢の秘密もともと、ゼニアの春夏レーベル、たとえば「トロフェオ(春夏)」などはあまりツヤ感のない生地でした。そのため、生地表面のツヤ感があり、同時に着た瞬間のひんやり感、「シルク」という言葉から連想される高級感や贅沢感があることなどから、「SHANG」はゼニアの夏のスーツ生地として人気を集めていました。

    ところが、2010年にゼニアの「トロフェオ(春夏)」が大きくリニューアルされ、光沢感が増し、おしゃれな柄が多く企画される生地となりました(「トロフェオ(春夏)」の詳細についてはこちらのページで詳しく解説しています)。
    また、同じく2010年には、太陽光を反射し、生地表面の温度上昇を防ぐ特殊トリートメント加工をほどこした生地「クールエフェクト」がゼニアから発表されました。
    この頃から、「ツヤ感がある」「涼しく着られる」という「SHANG」の特徴は、ゼニアの他のレーベルと比べ、それほど大きなアドバンテージではなくなってきます。

    また、「SHANG」の繊維の間に含まれている空気は、着る瞬間こそひんやり感をもたらしてくれますが、炎天下で一旦熱を帯びてしまうと今度は逆になかなか冷めにくくなってしまいます。そのため、「SHANG」は、猛暑が続く近年においてはやや敬遠されがちの生地となってしまいました。
    このような事情から、ゼニアの「SHANG」人気は、「トロフェオ(春夏)」「クールエフェクト」に一歩譲るポジションになってしまいました。さらに「クールエフェクト」の上級レーベルと位置付けられる「アメージング」の登場によってゼニアの春夏スーツが見逃せなくなっています。
    しかし今後「SHANG」はどのようにして生き残っていくのでしょうか。個人的には非常に気になるレーベルであることには間違いありません。

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