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    Ermenegildo Zegna(ゼニア)生地のトロピカルは本当にダメな素材なのか

    ゼニアを代表する夏の素材といえば、「トロピカル」。すでに、この場でその特徴をご紹介していますが、ここでおさらいをしますと、「トロピカル」とは、「オーストラリア産のスーパーファインウールを使った平織りの吸湿性に優れた」素材です。風合いもサラサラとした質感で、まさに「夏向き」と言えるのですが、一方で、「平織りなので、湿度が高い日本の夏では、表面が波打ったりシワになりやすい」などといった意見もあります。
    つまり、日本では夏向きの素材とは言えない、ということです。では、それは本当なのでしょうか?それには、生地に使用している糸と織り方「平織り」について、「ゼニア生地レーベル『トロピカル』」を参照しながら、もう一度考えてみるとよいでしょう。

    まず糸については、スーパーファインウールから取り出した、直径19.5ミクロン以下の繊維を撚った「単糸」を横糸に、そして、この「単糸」を2本撚り合わせて作った「双糸」を縦糸に使っています。細い糸をたくさん使うことによって糸の表面積を増やしているので、その分、吸湿性が高くなります。

    さらにこの「単糸」と「双糸」を交互に交差させて「平織り」にしているわけですから、縦・横方向の伸びに強いだけでなく、安定性が高く型崩れしにくくなります。

    弾力性に富むウールは、もともとシワになりにくい素材です。例えば、ウール生地を引き伸ばすと、約30%も伸びます。そして、伸ばした力を緩めて時間をおくと元の長さに戻ることが実証されています。つまり、シワができても回復しようとする力があるから、ということです。そのウールでできている生地が湿気によってシワになるのは、「吸湿性がある」というウールの長所のためです。湿気を吸収するために繊維が伸び、表面にシワとなって現れるのです。これは織り方とは関係なく、ウールであればどの生地にも言えることです。この吸湿性の良さは、シワになりやすいという「欠点」よりも、むしろ衣服の内側の湿気を吸収し、蒸し暑い季節でも快適な着心地を提供できる「長所」として捉えるべきでしょう。そして、さきほど述べたように、シワができても元に戻ろうとするので、平織りという理由だけで「表面が波打ったりシワになりやすい」とは言い難く、ひいてはトロピカルが日本の夏には不向きな素材である、という根拠にもなりません。

    「トロピカルは、日本ではなじまない生地である」といった一部のテーラーによる見解もあるようですが、科学的な根拠を得ている弊社の見解では、トロピカルはまさしく日本の気候に合ったレーベルであると結論づけられます。
    また、ゼニアの「トロピカル」とは別に、一般的な抽象名詞として「春夏用の平織の生地」を指す『トロピカル』という名称があります。この、一般的な『トロピカル』という素材は、高温多湿な日本の夏に適した素材として、スーツをはじめ、多くの衣料品に使われています。平織で吸汗性がよく、シワやゆがみが発生しにくい安定性があるので、日本の夏を乗り切るのに最適であると考えられてきたためです。
    一般的な『トロピカル』素材の持つ特性をそのまま反映し、かつ「糸」にも工夫をこらして開発された「ゼニアのトロピカル」。優れた春夏素材である「ゼニアのトロピカル」という存在があったからこそ、それをベースに「クールエフェクト」という新しいレーベルをも誕生しました。ゼニアの春夏レーベルに「トロピカル」の存在がなければ、クールエフェクトは登場しなかったかもしれません。

    ゼニアの春夏レーベルとしては、次世代の「クールエフェクト」さらに新登場の上位素材「アメージング」に役割を託したように見えて少し残念ではありますが、ゼニアの春夏素材の礎となったレジェンド素材であり続けるでしょう。

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